『入浴福祉新聞 第6号』(昭和59(1984)年3月1日発行)より
過去の入浴福祉新聞に掲載された記事をご紹介します。
発行当時の入浴や福祉等の状況を少しでもお届けできたら幸いです。
地域福祉の育成を急げ
中央大学文学部教授/日本老年社会科学会会長 那須 宗一
老人福祉は、身寄りのない老人等を収容する「施設福祉」から始まりました。
以来今日まで施設拡充策がとられ、家族が介護できるはずの老人までも、本人の意に反して入所しているのが実態のようです。
しかも施設では寝たきりのボケの発生率や進行度が在宅より著しく、老化を早めやすいこともわかってきました。
「老人の寝床を毎日少し動かすだけで寿命が短くなる」といいますが、年寄りの居所変更は心身に大きな影響を与えるからです。
病院のリハビリも、当人が「捨てられた」と思いがちなため、家へ帰る意欲をなくし、効果が上がりません。
地域に一部を開放する都市型ホームも、結局は孤立し活気のない施設に陥るようです。
老人にとって、家族が大切なのはどの国も同じで、そのため在宅看護が叫ばれ出したのです。
老夫婦の一方が死去あるいは寝たきりになった場合、娘夫婦と同居するなど、家族による日常的ケアーがやはり福祉の第一義なのです。
むろん同居には、双方がある部分で一線を画すなどルールが不可欠です。「べったり同居」がトラブルのもとになることは言うまでもないでしょう。
そして、老人に家庭内で役割を与えることです。
家族は元来が私的な福祉集団です。
これに現代は自治体の公的福祉制度が大きく加わり、福祉の専門家が家庭へ派遣されるまでになりました。
しかし日本は、家族と自治体の福祉をコーディネイトする「地域福祉」が未熟です。
町内会や自治会、奉仕団体、企業や労組、商店街、神社・仏閣などの組織的パワーを活用した住的主導型の福祉育成が今日の大きな課題です。
※発行当時の原稿をそのまま掲載しております。何卒ご了承の程お願い申し上げます。
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